第5回 メープルシロップの等級
メープルシロップは北米の先住民族(イヌイット)たちによって作り上げられたと言われています。北米のサトウカエデは日本やその他のカエデの樹液より糖分に恵まれ、生産効率の良さから樹液の採取がひろまっていったようです。
ここ北海道でもイタヤカエデの樹液をアイヌと呼ばれる先住民族が採取していたといいます。しかし北海道のカエデの樹液は北米のものに比べて糖分が半分以下、当時煮詰めて北米産のようなシロップにするのは難しく、彼らはそのまま飲んだりご飯を炊くときに使ったりしていたようです(ちなみにイタヤカエデはアイヌ語で「トペニ」。ト=乳汁、ペ=水、ニ=木を意味します)。
こうして北米で誕生したメープルシロップは今や遠く太平洋を越えた私たちでも簡単に手に入れることのできるものとなっています。パンケーキはもとより様々なお菓子や料理に使われているのを見ることができます。
食品売り場などに並んでいるメープルシロップの瓶を見て、皆さんお気づきになっていることと思いますが、このメープルシロップ、すべて同じ色をしているわけではありません。生きているカエデの樹液を煮詰めたものですから、木々それぞれの個性によって色が変わるのはなんとなく想像できますが、その色の違いは味や品質・値段などに関わってくるものなのでしょうか。メープルシロップは色が薄いものほどその年の早い時期に採れたものであり色が濃くなるほど遅い時期になります。
カナダ連邦政府は国の重要輸出品であるメープルシロップへの厳しい品質規定を1977年に設け、クォリティ・コントロールにあたっています。その最高級の品質のものが「No.1ライト」。いわば「一番絞り」に相当する新鮮な樹液を使ったものであると証明するものです。その年、樹液を採取し始めて一週間くらいのものしかそれに該当しないといいます。採取期間は2~3ヶ月ありますから極僅かな貴重なものといえるでしょう。等級は「No.1ミディアム」 「No.2アンバー」「No.3ダーク」と下がっていき、それに従い色は濃くなり樹液独特のくどさがでてくるといいます。ちなみに、料理人が好んで使うのは「No.2アンバー」だといいます。メープルシロップ独特のコクが一番強く感じられる等級と言われているので料理に加えてメープルシロップの特徴をつけたいときに使い易いのでしょう。シンプルなフレッシュフルーツやパンケーキには「No.1ライト」や「No.1ミディアム」、火を入れてこっくりと味をだしたい料理には「No.2アンバー」と使い分けてみると、メープルシロップの等級の違いがより感じられ美味しく口にすることができるかもしれませんね。
カナダ連邦政府はさらにこの等級と内容量を重量ではなく容量(リットル、ミリリットル)で表示することも義務付けています。というのも本物の比重は1.32あり、内容量が250ミリリットルならば330グラムあり、逆に250グラムならば190ミリリットルしか入っていないことになるのです。もしミ リリットル表示がなければ業務違反となり政府が認定した「本物」とはいえなくなってしまいます。
先人の築き上げた製法に敬意を示し、それを守る規定があるからこそ安心して私たちは美味しいメープルシロップを食べることができているのかもしれませんね。